三重県伊勢市を本拠地として活動するアマチュアオーケストラです。


指揮者の部屋

2018年04月08日 00:01

バルトーク ヴァイオリン協奏曲第2番

こちらから譜例をダウンロードしてお読みください。はじめにバルトークについて、個人的には20歳の頃から、20世紀前半を代表する最も偉大な作曲家の一人であると感じてきました。私にこの認識を一番強く与えてくれたのは、1936年に作曲された「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」でした。緻密な構成力、異常な程の緊張感、感情のコントロールする力の高さ、リズムの独自性などは、バルトークのみならず、他のどの作曲家の曲にもみられないすごさです。今回、ヴァイオリン協奏曲第2番を演奏できる幸運に恵まれました。このヴァイオリン協奏曲は、前述の「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」と同時期のバルトーク最盛期の傑

—————

2018年03月21日 17:25

ブルックナー 交響曲第9番

譜例をダウンロードして御覧ください。はじめにブルックナーについては、これまでにも指揮者の部屋で何度か掲載させていただきました。交響曲第9番をより深く理解していただくためには、2010年3月に掲載したブルックナーの生涯についての記事を、ご一読いただければ幸いです。ブルックナーは、ニーチェが「神は死んだ」と主張した19世紀の混沌とした世界において、比類のない個性的な作曲家です。教会のオルガニストとして長く活動し、神への絶対的信仰を持っていました。演劇的要素が非常に強いヴァーグナーを崇拝しながらも、当時流行的であった文学的潮流とは無縁に作曲をしました。作曲家としては40歳を過ぎてから交響曲の作曲を続

—————

2017年11月19日 10:23

ベートーヴェンの交響曲第9番

以下の原稿は、2017年12月10日に演奏予定の「松阪の第九」において、プログラムの挿み込まれる予定の原稿で、以前に執筆したものに修正を加えたものです。よろしければ御一読ください。  クラシック音楽の歴史上、天才の大作曲家は数え切れないほどいます。その中でもベートーヴェン(1770-1827)の偉大さは傑出しています。それぞれの作品の完成度の高さとその多さ、生涯にわたって充実した創作活動を続けてどんどん高みに達していること、自由・博愛のみならず、超越的なものへの視点を持ち続けるその精神の崇高さ、後世への影響力、19世紀から現代まで続く演奏頻度の高さなど、どれをとってもあり得ない超ハイレベルです

—————

2017年04月09日 21:30

ヴァーグナーのパルジファル

はじめにリヒャルト・ヴァーグナーについて、その音楽や人間に関する好き嫌いはあっても、音楽の圧倒的な存在感、巧みな過剰なほどの心理表現能力、音楽・文学・演劇の完璧な融合、後世への影響力などからみて西洋音楽史上最も重要な一人ということに異論を唱える人はほとんどいないでしょう。ヴァーグナーの作品で現在よく演奏されるのは10曲余りしかありません(全部で16時間くらいかかる「ニーベルングの指輪」4部作を4曲とみなしてですが)。とは言っても、その10曲余り全てが素晴らしく、全ての楽劇において、ヴァーグナー自身が台本も作っているという点でも、他に比べようがない大作曲家ということになります。今回演奏する「聖金

—————

2017年03月19日 21:41

ブラームスの交響曲第2番

はじめに 伊勢管弦楽団の定期演奏会ではブラームスの交響曲をこれまでに5回、演奏してきました。演奏は第4番、第2番、第1番、第4番、第3番の順で、今回の第2番は6回目になります。最初2回はそれぞれ指揮に山田一雄先生、黒岩英臣先生をお招きしたので個人的な発言をお許しいただけるなら、指揮者である私の立場としてはブラームス・チクルスが、本当に皆様のお陰で一応完成ということになります。このような作曲家は、私にとってはブラームスが初めてですが、ブラームスは、4つの交響曲すべてが多くの人々に愛され続けてきた作曲家といえるでしょう。 ブラームスの生涯やその音楽については、交響曲第3番についての「指揮者の部屋」

—————

2017年01月22日 18:46

リヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」

はじめに 伊勢管弦楽団の36回の定期演奏会ではリヒャルト・シュトラウス(以下シュトラウスと略)の「ばらの騎士」をメインに演奏します。伊勢管がシュトラウスの作品を演奏したのは、第5回定期でのホルン協奏曲第1番と、アンコールで演奏した2つの歌曲だけで交響詩などは一回も演奏していません。したがって、伊勢管にとって今回はほとんど初めてのシュトラウスと言っていいでしょう。シュトラウスは管弦楽曲とオペラの両方の領域で多くの作品を後世に残し、しかもその両方の領域とも愛されている曲が多いという点で、モーツァルトと双璧の作曲家であり、オーケストラを愛するものにとって、非常に重要な作曲家です。しかも、「ばらの騎士

—————

2016年03月20日 09:04

交響曲第2番「復活」について

<<譜例はこちらからダウンロードしてください。>> はじめに  マーラー(1860-1911)の交響曲第2番「復活」は、100名以上を要する大合唱、トランペットとホルンが10名、ハープが2台、ティンパニが2セット必要などというように演奏規模が大きく、演奏企画に相当の準備が必要であることにもかかわらず、演奏される機会は近年相当に増えており、マーラーの11曲の交響曲の中で特に好んで演奏されています。1970年代以降マーラーの演奏回数が急激に増え、マーラー・ブームなどといわれましたが、最近の交響曲第2番「復活」の演奏頻度の多さは、ブームという事象などを超えて、この曲がベートーヴェン、ブラームス、チャ

—————

2015年03月08日 14:16

メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」

譜例はこちらから はじめに  メンデルスゾーンは、モーツァルトやシューベルトと並んで、音楽史上まれにみる早熟の天才でした。しかし指揮者やピアニスト、また風景画家としてなどの多くの才能に恵まれ、完璧主義者でもあったため、作品の数は、同じく夭折したさきの二人ほどは多くありません。また交響曲についても、その番号は作曲順に並べられておらず、メンデルスゾーンの生涯を確認しながら曲を分析することが望ましいと思われます。そこでまずメンデルスゾーンの生涯を振り返り、それから「スコットランド」交響曲について論じたいと思います。なお生涯については、ハンス・クリストフ・ヴォルプス著、尾山真弓訳の『メンデルス

—————

2015年02月15日 17:21

チャイコフスキーの交響曲第5番

 伊勢管弦楽団の定期演奏会でチャイコフスキーを取り上げるのは、約20年ぶりです。チャイコフスキーは、言うまでもなく日本でも人気の高い偉大な作曲家で、彼の交響曲、特に第4,5,6番は作曲されてから120年あまりの間、オーケストラの演奏会で非常によく演奏されています。その中でも第5番はまとまりがよいために、最も好んで演奏される名曲です。今回この曲を演奏できることになったのは、ひとえに私たち皆が敬愛している植村茂先生のおかげなのですが、伊勢管弦楽団の演奏会にいつもお越しいただいている皆様にも伊勢管のチャイコフスキーの熱い演奏を聴いていただけるのはとてもありがたいことです。  チャイコフスキーは、手紙

—————

2014年10月26日 03:34

ベートーヴェンの交響曲第9番への想い

 ベートーヴェン(1770-1827)の数多い傑作の中で、後期すなわち1818年から1826年という9年間に作曲された作品は、その深さ、自由さ、歌にあふれていること、宗教性すなわち現実を超えた永遠や宇宙への視点などにより、ベートーヴェンの音楽にさらに際立った高みをもたらしています。ベートーヴェンにとって、初期から中期への発展・飛躍をもたらしたのは、聴覚障害の発症、演奏家活動の断念であり、中期から後期に作風がかわるきっかけは、「不滅の恋人」との別れ、結婚の断念でした。至高の約30曲の後期作品の中で、オーケストラ、あるいは合唱で演奏されるのは、交響曲第9番とミサ・ソレムニスだけです。  

—————


過去の指揮者の部屋はこちらからご覧ください。

 

音楽監督 大谷正人氏 略歴

 三重県立伊勢高等学校を卒業後、東京芸術大学音楽学部楽理科に入学。同大学卒業後、三重大学医学部に入学し卒業。1983年より1年2か月間、ミュンヘンにドイツ政府給費留学生として渡独。伊勢高等学校在学時には声楽を植村茂氏に、その後指揮を小泉和裕、故山田一雄の各氏に、チェロを河野文昭氏に師事。1981年の伊勢管弦楽団結成以来、音楽監督兼常任指揮者として同楽団を指揮している。特にマーラーの演奏には定評があり、1996年5月の交響曲第2番「復活」や、2006年5月の交響曲第8番、2011年の交響曲第9番では絶賛を博した。主要な著書に「音楽のパトグラフィー -危機的状況における大音楽家―」、「音楽における永遠をめざして -音楽のパトグラフィー2-」(いずれも大学教育出版)等がある。現在、国立大学法人三重大学教育学部教授であり精神科医師である。

 

 

<団員からのコメント>

 わがオーケストラのカリスマともいえる大谷先生。音楽への情熱ははんぱないものがあり、演奏者のレベルを遥かに超越した要求をされることもたびたびですが、その内容は愛にあふれており、楽団員全員敬愛しているところです。