三重県伊勢市を本拠地として活動するアマチュアオーケストラです。


指揮者の部屋

2015年03月08日 14:16

メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」

譜例はこちらから はじめに  メンデルスゾーンは、モーツァルトやシューベルトと並んで、音楽史上まれにみる早熟の天才でした。しかし指揮者やピアニスト、また風景画家としてなどの多くの才能に恵まれ、完璧主義者でもあったため、作品の数は、同じく夭折したさきの二人ほどは多くありません。また交響曲についても、その番号は作曲順に並べられておらず、メンデルスゾーンの生涯を確認しながら曲を分析することが望ましいと思われます。そこでまずメンデルスゾーンの生涯を振り返り、それから「スコットランド」交響曲について論じたいと思います。なお生涯については、ハンス・クリストフ・ヴォルプス著、尾山真弓訳の『メンデルス

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2015年02月15日 17:21

チャイコフスキーの交響曲第5番

 伊勢管弦楽団の定期演奏会でチャイコフスキーを取り上げるのは、約20年ぶりです。チャイコフスキーは、言うまでもなく日本でも人気の高い偉大な作曲家で、彼の交響曲、特に第4,5,6番は作曲されてから120年あまりの間、オーケストラの演奏会で非常によく演奏されています。その中でも第5番はまとまりがよいために、最も好んで演奏される名曲です。今回この曲を演奏できることになったのは、ひとえに私たち皆が敬愛している植村茂先生のおかげなのですが、伊勢管弦楽団の演奏会にいつもお越しいただいている皆様にも伊勢管のチャイコフスキーの熱い演奏を聴いていただけるのはとてもありがたいことです。  チャイコフスキーは、手紙

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2014年10月26日 03:34

ベートーヴェンの交響曲第9番への想い

 ベートーヴェン(1770-1827)の数多い傑作の中で、後期すなわち1818年から1826年という9年間に作曲された作品は、その深さ、自由さ、歌にあふれていること、宗教性すなわち現実を超えた永遠や宇宙への視点などにより、ベートーヴェンの音楽にさらに際立った高みをもたらしています。ベートーヴェンにとって、初期から中期への発展・飛躍をもたらしたのは、聴覚障害の発症、演奏家活動の断念であり、中期から後期に作風がかわるきっかけは、「不滅の恋人」との別れ、結婚の断念でした。至高の約30曲の後期作品の中で、オーケストラ、あるいは合唱で演奏されるのは、交響曲第9番とミサ・ソレムニスだけです。  

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2014年08月31日 20:34

フォーレの管弦楽組曲「ペレアスとメリザンド」

はじめに  フォーレ(1845-1924)は室内楽、歌曲、ピアノ曲のジャンルで素晴らしい傑作を多く残した大作曲家です。ただ以下に名前があがっているドビュッシーのようにフォーレの音楽をサロン音楽として、批判する人たちも一部にはいました。しかし、フォーレの音楽のもつ優しさ、高貴さ、繊細さ、そして現世の利害などではない、もっと遠く深い世界をみつめるその姿勢などは、他の作曲家にはないフォーレ独自の魅力であり、フォーレのレクイエムをはじめとする傑作は、将来にわたっても、忘れ去られる事はありえない永遠の輝きをもった音楽だと思います。 フォーレの管弦楽作品は、劇音楽が中心です。1893年にフォーレはサン=サ

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2014年03月31日 06:45

マーラーの交響曲第4番について

  楽譜1  楽譜2  楽譜3 はじめに マーラーの交響曲第4番は、マーラーの偉大さが幅広く認められるようになる前のLPの時代から演奏されたり録音されたりする機会も比較的多く、マーラーの11曲の交響曲の中でも時の流れを越えて人気の高い曲の1つです。マーラーの友人でもあり弟子でもあり、現在のマーラー人気を引き起こすにあたって最大の貢献をした指揮者であるブルーノ・ワルターも、この交響曲第4番を最も数多く録音しました。しかし初演時の評判は悪く、それはメルヘンのような曲でありながら、最後はppで消えるように終わり、また天使と死が同時に現れる

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2014年03月01日 12:16

ヤナーチェクのシンフォニエッタ

はじめに  伊勢管弦楽団ではチェコ出身の作曲家の音楽を数多く取り上げてきています。これまでに32回の定期演奏会で演奏してきた作曲家を出身国で分類すると、西洋近代の管弦楽作品の基盤を作ったドイツ・オーストリア系の作曲家は別格として、他の作曲家を地域別にみると、これまでロシア系(チャイコフスキー、ラフマニノフなど)が7回、フランス系(ラヴェル、フォーレなど)が6回に対して、チェコ出身の作曲家は、マーラーを含めると昨年までになんと14回(ユダヤ人であるマーラーを除いても6回)と、非常に多くの作品を演奏してきました。しかし、これまで演奏してきたチェコ出身の作曲家と比べると、今回のヤナーチェクは同じチェ

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2013年08月04日 19:59

シュトラウスの生涯

はじめに  今回の指揮者の部屋では、ヨハン・シュトラウスについてご紹介いたします。ヨハン・シュトラウスの名前は有名ですが、日本語による伝記などは意外と非常に少ないです。シュトラウス・ファミリーについても、ヨハン・シュトラウス二世がワルツ王で、父親も同じヨハン・シュトラウスという名前、弟ヨゼフ・シュトラウスも「天体の音楽」などよく似たワルツを作曲している、という程度の一般的認識ではないでしょうか。「こうもり」とウィーン・フィルによるニューイヤー・コンサート(始まったのはオーストリアがナチス・ドイツに占領された1939年です)がなければ、ワルツ王のヨハン・シュトラウス(二世)ですら19世紀ウィー

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2013年04月03日 07:48

モーツァルトのピアノ協奏曲

モーツァルト(1756-1791)は自身で作曲したものとしては23曲のピアノ協奏曲を残していますが(最初の4曲は編曲したもの)、傑作揃いでピアノ協奏曲というジャンルはモーツァルトによって打ち立てられたと言ってもよいでしょう。モーツァルト研究家の中で最もすぐれた一人であるアルフレート・アインシュタインは、「ピアノ・コンチェルトにおいて、モーツァルトは、いわばコンチェルト的なものとシンフォニー的なものとの最後の融合の言葉を語った。この融合はより高い統一への融合であって、それを越えて行く《進歩》は不可能であった。なぜならば、完全なものはまさに完全だからである」と言っています。ピアノ協奏曲ではこのよう

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過去の指揮者の部屋はこちらからご覧ください。

 

音楽監督 大谷正人氏 略歴

 三重県立伊勢高等学校を卒業後、東京芸術大学音楽学部楽理科に入学。同大学卒業後、三重大学医学部に入学し卒業。1983年より1年2か月間、ミュンヘンにドイツ政府給費留学生として渡独。伊勢高等学校在学時には声楽を植村茂氏に、その後指揮を小泉和裕、故山田一雄の各氏に、チェロを河野文昭氏に師事。1981年の伊勢管弦楽団結成以来、音楽監督兼常任指揮者として同楽団を指揮している。特にマーラーの演奏には定評があり、1996年5月の交響曲第2番「復活」や、2006年5月の交響曲第8番、2011年の交響曲第9番では絶賛を博した。主要な著書に「音楽のパトグラフィー -危機的状況における大音楽家―」、「音楽における永遠をめざして -音楽のパトグラフィー2-」(いずれも大学教育出版)等がある。現在、国立大学法人三重大学教育学部教授であり精神科医師である。

 

 

<団員からのコメント>

 わがオーケストラのカリスマともいえる大谷先生。音楽への情熱ははんぱないものがあり、演奏者のレベルを遥かに超越した要求をされることもたびたびですが、その内容は愛にあふれており、楽団員全員敬愛しているところです。